DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術やデータの活用によってビジネスモデルや業務プロセスを変革させることで、競争上の優位性を確立することです。
さまざまな企業でDXが進んでおり、中小企業でもDXの推進が急務とされています。
しかし、中小企業にDXが必要な理由がわからない経営者や担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいえば、DXを進めることで、人手不足の解消やデータを基にした経営判断、法改正への対応が可能です。
また、業務効率化や生産性の向上、必要なデータの蓄積が可能なほか、人材の採用・確保しやすくなり、他社に対する優位性を高められるメリットがあります。
今回は中小企業にDXが必要な理由やメリットについて詳しく解説します。また、中小企業でのDXの進め方やDXを成功させるポイント、利用できる補助金も紹介します。
DXについてお悩みの経営者・担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
DXとは何か
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の頭文字を取った略称です。
具体的には、デジタル技術を活用して以下を実現することを目指します。
- 企業の課題を解決する
- 業務プロセスやビジネスモデルを変革する
- ビジネスにおける新しい価値を創造する
- 競争上の優位性を確立する
中小企業にDXが必要な理由とは
現在では社会全体でDXが進められており、中小企業においてもDXの推進が必要といわれています。その理由は以下のとおりです。
- 人手不足を解消するため
- データに基づいた経営の意思決定ができるため
- 制度改正に対応するため
それぞれ詳しく解説します。
人手不足を解消するため
DXが必要な大きな理由の1つが、人手不足の解消です。
現在、日本では少子高齢化の進行によって、生産年齢人口(15歳~64歳)の減少が進んでいます。
厚生労働省によれば、団塊ジュニア世代が65歳となる2040年には、65歳以上の人口の割合が全体の35%に増加、生産年齢人口が55%に減少すると見込まれています。
企業は限られた人材でいかに生産性を向上させるかを考え、実行しなければならず、業務プロセスの見直しが必要になります。
また、人材採用の面でもDXの推進が不可欠です。
なぜなら、近年の求職者は働き方への関心が高いほか、デジタル化がどの程度進んでいるかを、企業を選ぶ決め手にする傾向にあるからです。
DXを進めなければ、生産力や労働力が低下し、人材の確保や事業経営に影響する恐れがあるでしょう。
データに基づいた経営の意思決定ができるため
データに基づいた経営の意思決定(データドリブン経営)が重要であることも、DXが必要な理由です。
データドリブン経営とは、データを蓄積・解析して経営戦略を立案・実行する経営手法のことです。
DXを進めることで、企業はデータを収集・分析できます。分析したデータの活用やデータを基にした意思決定ができるなど、効率的かつ効果的な事業運営が可能になります。
制度改正に対応するため
さまざまな制度改正に対応するためにも、DXが必要な理由です。
デジタル社会の実現のために、日本政府はさまざまな制度を改正していますが、それらはデジタル対応が前提となっています。
義務化された電子取引のデータ保存では、保存方法の変更に加えて、生産性向上のために業務プロセスの改善が必要になります。
また、デジタルインボイスの導入が予定されていることを考えれば、今後は電子取引が主流になる可能性が高いといえます。
制度改正によるデジタル化の波が起きている現状を踏まえて、業務プロセスをデジタル化することが重要になるでしょう。
中小企業のDXが進まない4つの原因
中小企業でもDXの推進が必要ですが、実際にはDXが進んでいるとはいえない状況です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が2023年に行ったアンケート調査によれば、DXに取り組んでいる、もしくは取り組みを検討している中小企業は、全体の31.2%にとどまっています。
では、どうして中小企業ではDXが進まないのでしょうか。その原因は以下のとおりです。
- DXの推進に予算をかけられない
- DX推進を任せられる人材がいない
- DXを理解していない
- DXの必要性を感じていない</li>
それぞれ詳しく解説します。
参考:中小企業のDX推進に関する調査(2023 年)|独立行政法人中小企業基盤整備機構
DXの推進に予算をかけられない
DXが進まない理由の1つが、予算がかけられないことです。
企業がDXツールを導入する場合、導入コストや運用コストが発生します。また、社内のインターネット設備やデジタルデバイスのアップデートが必要になることもあります。
中小企業では、大きな予算を確保するのが難しい場合があり、ツールの導入を躊躇するケースが多いため、DXが進みづらいのです。
DX推進を任せられる人材がいない
DXの推進を任せられる人材がいないことも、DXが進まない理由の1つです。
中小企業には、DXやITに詳しい人材が不足しているケースが多いのが実情です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構のアンケートによれば、中小企業がDXに取り組む場合の課題について、「ITに関わる人材が足りない」(28.1%)、「DX推進に関わる人材が足りない」(27.2%)と回答する企業が多く、人材が足りていないことがわかります。
参考:中小企業のDX推進に関する調査(2023 年)|独立行政法人中小企業基盤整備機構
DXを理解していない
DXが進まない理由として、そもそもDXを理解していないことも挙げられます。
経営者がDXという言葉を耳にしたことがあっても、DXについて詳しく知らない、どのようなメリットがあるのかわからない、といったケースがあります。
既出のアンケート調査におけるDXの理解度について「わらかない・どちらともいえない」「あまり理解していない」「理解していない」と回答した企業の合計は50.9%となっており、ほぼ半数の企業はDXへの理解が乏しい状況にあることがわかります。
DXの必要性を感じていない
DXの必要性を感じていないことも、DXが進まない理由です。
DXを理解していない企業は、DXが必要かどうかも判断できません。また、DXについて理解していても、自社には必要ないと感じる場合もあるでしょう。
他にも、現状維持を優先する意識があったり、DXによる大きな変化を恐れていたりする場合も、DXについて前向きに取り組みにくくなります。
中小企業におけるDXのメリット
中小企業がDXを実現すれば、以下のようなメリットがあります。
- 業務効率化と生産性向上が期待できる
- 経営に必要なデータを蓄積できる
- 人材の確保や採用がしやすくなる
- 事業を継承しやすくなる
- 競合他社に対する優位性が高まる</li>
それぞれ詳しく解説します。
業務効率化と生産性向上が期待できる
DXの大きなメリットが、業務効率化と生産性向上を実現できることです。
DXの推進によって、これまで人手に頼っていた業務を自動化できたり、非効率的だった業務を見直したりできます。
また、業務工数の削減が可能になり、業務に必要な人的リソースを削減できます。
業務効率化によって他の業務に人的リソースを集中できるため、生産性の向上や業績改善につながるでしょう。
経営に必要なデータを蓄積できる
DXによるメリットとして、経営に必要なデータを収集・蓄積できることが挙げられます。
DXツールの導入により、業務や事業のデータの収集や分析を自動化できるからです。
会社の現状を正確に把握できるため、的確な判断をスピーディに行えるようになります。
迅速な経営判断を下せるようになれば、市場競争にも対応しやすくなるでしょう。
人材の確保や採用がしやすくなる
人材の確保や採用がしやすくなるのも、DXのメリットです。
DXの推進によりビジネスや業務のプロセスが見直されれば、従業員の働き方も改善されます。
従業員の事情に合わせた柔軟な働き方が可能になり、時短勤務希望者や定年退職後に働きたい人なども採用できるようになります。
また、求職者のうち、デジタルネイティブと呼ばれる世代(1990年代~2000年代生まれ)では、業務のデジタル化の状況が入社や定着の決め手になる傾向にあります。
若年層の人材を採用しやすくするためにも、DXは欠かせないといえるでしょう。
事業を継承しやすくなる
事業を次の世代に継承しやすくなるというのも、DXを進めるメリットです。
中小企業庁が発表した2024年度版中小企業白書によれば、2023年の中小企業の休廃業・解散件数は、ここ3年で最も多い水準となっています。
企業や事業の存続は中小企業の大きな課題の1つですが、DXの導入によって経営に必要なデータの収集や分析ができ、経営判断のノウハウや方法論を後継者に示せれば、事業を継承しやすくなるでしょう。
また、BCP対策(事業継続計画)の側面でも、DX推進は大きなメリットとなります。
BCP対策とは、緊急事態が発生した際に事業の継続や早期復旧するための計画について、普段から準備することです。
地震や津波、台風など、自然災害のリスクが高い日本では、BCP対策は避けられない課題です。
クラウド上に事業に必要なデータが集積できれば、インターネット環境があればどこでも業務を遂行できます。
DXの推進は、BCP対策としても重要としても重要です。
競合他社に対する優位性が高まる
DXの推進によって、競合他社に対する優位性を高められるメリットがあります。
DXの最終的な目的は、企業としての競争力を強化し、他社と比較して優位に立つことです。
DXによって経営に必要なデータをうまく活用できれば、新たなサービスや商品を開発できるなど、事業が拡大する可能性があります。
中小企業でのDXの進め方
DXの必要性やメリットを解説しました。では、実際にDXを進めたい場合、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、中小企業でのDXの進め方について解説します。具体的な手順は以下のとおりです。
- 自社の課題とビジョンを明確にする
- DXを進めるための枠組みをつくる
- DXを進めるための人材を確保する
- DX推進に必要なツールを選ぶ
- DXによって業務プロセスを変革する
- PDCAを回す
それぞれ詳しく解説します。
1.自社の課題とビジョンを明確にする
中小企業がDXを進める場合、まずは自社の課題とビジョンを明確にすることから始めます。
どのような業務に時間や手間がかかっているのか、課題を見つけましょう。加えて、DXの推進によって業務プロセスや従業員の働き方がどのように変化するか、ビジョンを描くことも重要です。
課題とビジョンをはっきりさせ、逆算してDXを進めることを考えましょう。
2.DXを進めるための枠組みをつくる
次に、DXを進めるための枠組みをつくります。
DXは、社内全体で進めるべきものです。そのために、以下のポイントについて社内で共有しましょう。
- DXによって会社をどうしたいのか
- なぜDXを進める必要があるのか
- どういった課題をどのように解決するか
経営陣や管理職、従業員の意識が同じ方向を向くようにすることが大切です。そのための手段としてマニュアル作成や研修を行い、DXを進める枠組みを構築しましょう。
3.DXを進めるための人材を確保する
次に、具体的にDXを進めるための人的リソースを確保します。
DX推進のリーダーを選んだり、DX専門の部署を設置したりして、どの人材にDX推進を任せるのかを決めます。
リーダーはDXの重要性を理解している人物で、変革を引っ張る意欲のある人物が適任です。
また、DX専門の部署にはITに関する知識や経験を持った人物を配置するのが理想です。そのような人物がいない場合は、外部に委託することも考えましょう。
4.DX推進に必要なツールを選ぶ
次に、DX推進に必要なツールを選びます。
DX推進チームによって、社内の課題を解決できるDXツールをピックアップしましょう。
企業によってDXにかけられる予算や目標、戦略などが異なるため、自社のニーズに合ったDXツールを選択することが重要です。
また、既存のツールやサービスに、ニーズに合ったものがない場合は、独自にシステムを構築することも検討しましょう。
ポイントは、DXツールを初めて導入する企業でも採用しやすいツールを選択することです。導入した効果を検討しながらDXを進めることを意識してください。
5.DXによって業務プロセスを変革する
DXツールを導入したら、DX推進の計画に沿って業務プロセスを変えていきます。
中小企業のDX成功のポイントは、スモールスタート(=小さく始めること)ですので、すべてを一気に変えるのではなく、特定の業務から変革することが大切です。
実行したものを評価し、次に新しい計画を実行するなど、小さな成功体験を積み重ねていきましょう。
6.PDCAを回す
実行した業務プロセスの変革について、効果を検証します。
実際に導入したツールや、業務の変化、発生した結果について、どのような効果があったのか、どのような課題が残ったのかを検証しましょう。
PDCAを回し、より効果的な取り組みを実行できるようになれば、社内のDX化は大きく前進します。
トライ&エラーを繰り返して、会社にとって効果的な仕組みを構築しましょう。
中小企業が(低予算でも)DXを成功させるポイント
中小企業がDXを成功させるためのポイントは、以下のとおりです。
- 経営層が中心に取り組むこと
- 何を改善したいのかはっきりさせること
- DXは小さく始めること
- DX人材の育成に取り組むこと
- 相談できる支援会社を見つけること</li>
DXの成功にはどれも大切なことです。詳しく解説します。
経営層が中心に取り組むこと
中小企業がDXを成功させる重要なポイントは、経営層が中心となってDXに取り組むことです。
DXはビジネスモデルや業務プロセスの変革を目指すものです。そのためには、まずは経営層がDXの必要性や重要性を認識したり、投資判断をしたりする必要があります。
経営層が前向きにDXに取り組めれば、中小企業のDX化は進みやすく、成功しやすくなります。
何を改善したいのかはっきりさせること
DXを成功させるには、何を改善したいのか、明確にすることが重要です。
「国が進めているから」「営業担当者に勧められたから」といった理由でDXを進めても、成功することはありません。
会社の課題を明確になれば、適切な改善策が見つかり、必要なツールの導入や業務プロセスの変革ができるのです。
何となく始めるのではなく、何を改善したいのかをはっきりさせることを意識してください。
DXは小さく始めること
DXを成功させるには、小さく始めることが重要です。
DXを推進させたいからといって、いきなり大規模な取り組みを行っても、頓挫してしまう可能性が高いためです。
バックオフィス業務やメイン業務の一部など、身近なところから小さく始め、DXについての評価と施策、改善を繰り返しながら、DXの範囲を徐々に広げてください。
DX人材の育成に取り組むこと
DXの成功のためには、DXを推進する人材が重要になります。
DX専門の部署に専任の担当者を付けて、DXを進めながら人材の育成に取り組みましょう。
DXの必要性を伝えたうえで、どのようなところからDX化に取り組むか、経営層やリーダーとともに考え、行動してもらうことが大切です。
社内の現状を把握している人なら、自動化が必要な箇所や業務も理解しやすいはずです。
なお、専任者を付けるのが難しい場合は、兼任させたり、外部の人材に委託したりすることも検討してください。
相談できる支援会社を見つけること
DXを成功させるには、相談できる支援会社を見つけることが重要です。
DXにおける支援会社とは、DXツールの製造元や運営会社を指します。
支援会社のなかには、ただツールを提供するだけではなく、自社の課題を解決する方法を提案してくれるベンダーも存在します。
DXの進め方や、抱えている課題の解決方法がわからない場合に、信用できる支援会社がいれば相談しやすいでしょう。
DXについて相談できる支援会社をお探しなら、フミダスDXまでお問い合わせください。現状と課題をヒアリングして、最適な解決方法を提案できます。
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DX予算が足りない中小企業が利用できる補助金や助成金
中小企業のDXが進みにくい理由の1つとして、予算が足りないことが挙げられますが、DXを進める際に利用できる補助金制度や助成金制度があります。
うまく活用すれば、予算が限られている場合でも、社内のDXを最大限進められるでしょう。
DX推進に利用できる補助金・助成金には、以下のようなものがあります。
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
それぞれ詳しく解説します。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者の生産性の向上を目的に、DXの推進や業務効率化をサポートするための補助金です。
さまざまな業種で活用できるほか、システム導入費用やデジタルデバイスの購入費用などに利用できます。
要件や類型によって異なりますが、最大450万円の補助を受けられます。
DX推進のためにツールの導入を検討している企業には、魅力的な補助金といえるでしょう。
参考:IT導入補助金2024|令和5年度補正サービス等生産性向上IT導入支援事業
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称「ものづくり補助金」)とは、中小企業や小規模事業者が制度の変更(働き方改革やインボイス制度など)に対応するために必要な設備投資をサポートする補助金です。
システムの構築費用や技術導入に関連する費用、専門家によるコンサルティング費用などに利用できます。
こちらも要件や類型、従業員数により異なりますが、100万円から4,000万円の補助金を受けられます。
参考:ものづくり補助金総合サイト|ものづくり補助事業公式ホームページ
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、ウィズコロナ時代・ポストコロナ時代といった社会の変化に対応するために、新分野への進出や事業転換、再編成など、事業の再構築に取り組む企業をサポートするための補助金です。
システム構築や技術導入、コンサルティングのための費用に加えて、クラウドサービスの利用料、事業再構築のための外注費用、研修費用など、幅広い目的で利用できます。
従業員数によって補助金額が異なり、100万円から7,000万円までの補助を受けられます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、社会制度の変更に対応する小規模事業者をサポートするための補助金です。
業務効率化や販路拡大に取り組む事業者に、必要資金の一部を補助しており、上限金額は200万円となっています。
参考:小規模事業者持続化補助金|商工会議所地区小規模事業者持続化補助金事務局
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中小企業のDXを進めよう
今回は、中小企業にDXが必要な理由やメリット、DXの進め方、成功のポイントを紹介しました。
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投稿者プロフィール
-
株式会社真工社 DX推進室 課長
工程設計や新規品の立ち上げ、海外工場への技術支援、製造責任者を経て、DX推進室の立ち上げに参画。DX推進室の責任者として社内外のDX支援に取り組む。
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